2025.10.24
2025年8月20日(水)18:30~20:30に、3×3ラボで能登復興ローカルシフトアカデミー2025のプレイベントを実施しました。このイベントでは、能登半島地震をきっかけに関わりを深めた学生、起業家、企業人、移住者など、多様な立場の人々が登壇しました。それぞれの視点から、能登が直面する厳しい現実と、それを上回るほどの魅力、そして未来への希望が語られました。
登壇者たちが口を揃えて語ったのは、一度訪れると抜け出せなくなる「能登沼」とも言える、その不思議な引力でした。それは、豊かな自然や絶品の食だけでなく、訪れる人を「お帰り」と温かく迎え入れる人々のエネルギーにありました。
なぜ多くの若者が能登に惹きつけられるのか。そして、私たちに何ができるのか。能登の「今」と、私たちが未来を共に創るための第一歩を考えることができたイベントでした。
概要
日 時:2025年8月20日(水)18:30-20:30
場 所:3×3ラボ

2024年1月1日に発生した能登半島地震は、地域がもともと抱えていた人口減少という課題を、一気に加速させる危機をもたらしました。登壇者の一人は「災害は地域のトレンドを加速させる」という衝撃的な言葉で、その厳しい現実を語りました。
データだけを見れば、未来は暗いものに見えるかもしれません。しかし、イベントで語られたのは、絶望的な状況だからこそ生まれる「希望の光」でした。その象徴が「ワクワク」というキーワードです。
例えば、ある大学生がSNSで「閉校になる母校で何かできないかな」とつぶやいたことから、地域の人々を巻き込んだ「最後の登校日」というイベントが実現されました。当日は大勢の人が集まり、町に久しぶりの活気と「ワクワク」が生まれました。若者の小さなアクションが、地域全体を動かす大きなエネルギーになり得ることを示すエピソードです。
さらに、震災は未来に向けた新しい挑戦を生み出すきっかけにもなっています。ボランティアの受け入れ等で課題となっている「宿泊施設の不足」に対し、今、能登の各地で面白い人たちが宿泊できる施設を作り始めています。課題をチャンスと捉え、新しい人の循環を生み出そうという動きです。
震災を機に「町が変わらなければいけない」という意識が地域全体で高まり、外からの新しいチャレンジを「ぜひやってほしい」と応援してくれる土壌が生まれている、と登壇者は語ります。この困難な状況の中からこそ、新しい未来を創造するエネルギーが生まれる。その力強い姿は、私たちに大きな希望を与えてくれます。

「行けばわかる」- 言語化できない能登の引力
イベントを通して、登壇者たちが最も熱を込めて語ったのが、言葉では説明しきれない能登の魅力、すなわち「能登の引力」でした。
フリーランスの助川さんは、能登を「好きとか愛してるを通り越して、もはや私の一部」と表現しました。また、株式会社サンカクの大石さんは、初めて能登を訪れた際、現地の人々の「ものすごく強烈なエネルギーに心が揺さぶられ、人生が加速した」と語ります。彼らにとって能登は、単なる観光地ではなく、自分の人生を変えるほどのインパクトを持つ特別な場所です。
その引力の源泉はどこにあるのでしょうか。一つは、日本の原風景ともいえる豊かな自然と、そこで育まれた「食」の力です。「農家民宿で食べる新米は、ひっくり返るくらい美味しい。」「冬の寒ブリは、バカみたいにうまい!」といった熱のこもった紹介がありました。この強烈な食体験によって、大石さんは「今年こそ、自分がブリを捌けるようになって、寿司を友達に振る舞いたい」と寿司職人の学校に通う決意をさせるほど。能登の食体験は、人を動かすエネルギーを持っていました。
しかし、何よりも多くの登壇者が能登町の魅力として挙げたのは「人」でした。そこには、訪れる人を温かく迎え入れ、「お帰りなさい」と声をかけてくれる家族のような関係性があります。この圧倒的な体験のインパクトは、多くの登壇者が「言語化するのをやめた。行けば一発でわかる」と語るように、理屈を超えたものでした。
一度その魅力に触れると、気づけば抜け出せなくなるほど夢中になる。それこそが、彼らが「能登沼」と呼ぶものの正体なのかもしれません。
今回のイベントを通して見えてきたのは、能登の復興が、単にインフラを元に戻す作業ではないということです。それは、この先の地域の未来を「誰が」「どのように」創っていくのかという、私たち全員に向けられた問いそのものでした。
登壇者たちが語った「言語化できない魅力」や「数字を超える何か」。それは、私たちが普段、情報や言葉だけで物事を判断しがちな現代において、実際にその場へ足を運び、体験することの圧倒的な価値を教えてくれます。
そして、学生のPR活動や社会人のスキル提供、あるいは「友達に会う」という純粋な動機まで、多様な関わり方が「共に創る」力になることも示されました。特に「未来への種まき」という言葉が心に残ります。今、私たちが能登を訪れ、現地の人と繋がり、その土地のファンになること。その一つひとつの小さなアクションが、数年後、数十年後の能登の未来を支える大きな力になるのかもしれません。
「何か活動をするために行くんだ!」と気負う必要はありません。まずは能登町を訪れ、景色を眺め、食事をし、人と話してみる。その一歩が、あなた自身の世界を広げ、能登の未来を「共に創る」ための、確かな希望に繋がっていきます。活かして「共に創る」という関わり方です。
例えば、東京大学のFSプログラムで関わった大学生たちは驚くべき行動力を発揮していました。志賀さんから、「FSプログラムの学生は、震災をきっかけに「東京にいる若い世代が能登に関わるきっかけを提供したい」と活動を開始している」と話をしています。学生ボランティアの派遣や、大学の学園祭で能登の特産品を販売し1,000人以上を集客するなど、学生ならではのネットワークと発想力で、首都圏と能登を繋いでいます。
日本航空に勤務する上入佐さんは、社内ベンチャー制度を活用し、自社のネットワークを活かして能登の魅力をPRするなど、ビジネスとして持続可能な貢献を目指しています。また、東京で培ったWebやPRのスキルを活かし、フリーランスとして活躍している助川さんは、奥能登地域のECサイト運営を手伝うなど、まさに「よそ者」の視点と専門性で地域に新しい風を吹き込んでいます。
印象的だったのは、「能登へ行くのに、特別な理由なんていらない」という言葉です。当初「復興のため」という大義名分を探していましたが、今では「能登にいる友達に会うこと」が一番の目的になったと、大石さんは語っています。
「復興=何か役に立たなければいけない」というプレッシャーから解放され、「復興=人に会いに行く」。そんな軽やかで温かい関わり方も、立派な「共に創る」形なのではないでしょうか。

今回のイベントを通して見えてきたのは、能登の復興が、単にインフラを元に戻す作業ではないということです。それは、この先の地域の未来を「誰が」「どのように」創っていくのかという、私たち全員に向けられた問いそのものでした。
登壇者たちが語った「言語化できない魅力」や「数字を超える何か」。それは、私たちが普段、情報や言葉だけで物事を判断しがちな現代において、実際にその場へ足を運び、体験することの圧倒的な価値を教えてくれます。
そして、学生のPR活動や社会人のスキル提供、あるいは「友達に会う」という純粋な動機まで、多様な関わり方が「共に創る」力になることも示されました。特に「未来への種まき」という言葉が心に残ります。今、私たちが能登を訪れ、現地の人と繋がり、その土地のファンになること。その一つひとつの小さなアクションが、数年後、数十年後の能登の未来を支える大きな力になるのかもしれません。
「何か活動をするために行くんだ!」と気負う必要はありません。まずは能登町を訪れ、景色を眺め、食事をし、人と話してみる。その一歩が、あなた自身の世界を広げ、能登の未来を「共に創る」ための、確かな希望に繋がっていきます。
アカデミーの詳細はこちらから。